IPOでよく見る「想定価格」は、上場が承認されたときに付けられる仮の株価で、想定発行価格とも言われます。主幹事証券会社が予想した投資家が買ってくれそうな価格で、これをもとに仮条件や公募価格が決まる、重要な指標です。このサイトでも、割安性や、最初の初値予想は想定価格を元に計算しています。
今回は、IPO投資で超重要な「想定価格」について、解説していきます!
想定価格は、原則として下の式で計算されます。
想定価格
= 適正株価 - ディスカウント価格
適正株価はその名の通り、企業価値に対する適正な株価です。この適正株価からディスカウント(割引)した価格が想定価格になります。後ほどくわしく説明しますが、IPOの想定価格は、最初から割引されたお得な価格設定になっているのです。これがIPO投資法が勝ちやすい理由の一つです。
では、適正株価はどう決まるのか、ディスカウント率はどのくらいなのかをそれぞれ説明します。
適正株価は、予想EPSと類似企業のPERから計算されます。
適正株価
= 予想EPS × 類似企業のPER
予想EPSの「EPS」とは、日本語で言うと「1株あたり純利益」です。計算では上場申請した期の予想EPSを使います。
類似企業のPERは、同じようなビジネスを展開している上場企業のPERを使います。
以上の2つの要素から、主幹事証券会社が適正株価を計算しています。ただし、主幹事証券会社が計算に使った予想EPSと類似企業のPERは非公開なので、正しい適正株価は個人投資家には算出できません。
IPO投資では細かい数字を追う必要はなく、「IPO企業の適正株価はこうやって決まっているんだ」ということだけ理解しておけば十分です。
基本的に20~40%に設定されているようです。IPO投資は、投資家がリスクを負うので、その分割引して売っています。
投資家はこのようなリスクを負うため、適正株価よりも安い値段で買えるのです。
それでは、実際にどれくらいのディスカウント率になっているか確認してみましょう。2020年3月に上場した企業から10社ピックアップし、それぞれの適正株価と想定価格からディスカウント率を計算してみました。表の適正株価は「上場日に発表された予想EPS」と、「類似企業のPERの平均値」を使って独自に計算しています。
企業名 | 想定 価格 |
適正 株価 (独自) |
ディスカウント率 |
---|---|---|---|
Macbee Planet (7095) |
1,860円 | 2,548円 | 27.00% |
NexTone (7094) |
1,880円 | 1,985円 | 5.28% |
ニッソウ (1444) |
3,750円 | 5,535円 | 32.25% |
サイバー セキュリティ クラウド (4493) |
4,010円 | 5,165円 | 22.37% |
アディッシュ (7093) |
1,090円 | 2,259円 | 51.75% |
ヴィス (5071) |
820円 | 1,610円 | 49.07% |
リバー ホールディングス (5690) |
920円 | 1,545円 | 40.46% |
日本 インシュレーション (5368) |
920円 | 1,256円 | 26.73% |
関通 (9326) |
470円 | 680円 | 30.90% |
ゼネテック (4492) |
1,700円 | 2,626円 | 35.26% |
多くの企業が20~40%ほど安くなっています。中には50%も割引きされているところもあります。独自に計算した適正株価ではありますが、IPO銘柄の想定価格は適正株価よりも割安になっているのがわかります。
IPO投資法の勝率が高い理由の一つが、「想定価格がお得な価格である」ことなのです。
適正株価の計算には一部例外があります。
これら条件に当てはまる場合、上場申請をした期の予想EPSを使うと、適正株価がマイナスになったり、実態よりも株価が低くなったりします。これでは想定価格が計算できないので、例外として次の計算方法のどちらかを使います。
例外の方法で計算すると、ディスカウントしても割高感が出ます。2019年に上場したPER44.52倍のAI CROSS(4476)や、2018年に上場したPER129.01倍のHEROZ(4382)など、AIをテーマにした企業のPERが異常に高いのはこれが原因です。
想定価格は、主幹事証券会社が予想EPSと類似企業のPERから「適正株価」を計算し、「20~40%」割引して決められます。そのため、企業の適正株価と比べて割安な水準となっている場合が多く、IPO投資は初値売りでも利益が出やすくなっています。
申し込む際に、参考にしてみて下さい。
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