2023年10月からIPOのルールが変わります【日程・公募価格・売出株数】

最終更新日:
2023年10月17日

 すでに一部銘柄で適用されていますが、2023年10月からIPOのルールが大きく変わります。IPO投資家にも影響が大きい変更ですので、しっかりと理解しておきましょう。

 さて、どこが変わったのかと言うと、日本証券業協会の「IPO における公開価格の設定プロセスの変更点・留意点等について」には、今回の変更点が以下のように記述されています。

①仮条件の範囲外での公開価格設定、売出株式数の柔軟な変更
②上場日程の期間短縮(承認前提出方式)
③上場日程の柔軟化(承認前提出方式・承認時提出方式)

 大きく分けて3つの変更なのですが、これらをかんたんに説明すると次の通りです。

公募価格が仮条件の範囲を超えられるようになる、IPOの規模が後から変わることがある
②承認~上場までの日数が短くなることがある
③上場日を含むIPOの日程が変動することがある

 「公募価格が仮条件の範囲外で決まる」、「IPOの規模が後から変わる」、「IPOの日程が変動する」となると、IPO投資家にも影響が大きそうですね。それぞれ、くわしく見ていきましょう。

公募価格が仮条件の範囲を超える、規模が後から変わる

 まずひとつ目は、「仮条件の範囲外での公開価格設定、売出株式数の柔軟な変更」です。
 一定の範囲内であれば、仮条件の範囲外での公開価格設定と「公開価格の設定と同時に売り出し株式数の変更」ができるようになりました。

 その「一定の範囲内」は以下の通りです。

①公募価格が仮条件の下限80%以上かつ上限の120%の範囲内

②公募価格決定時の売出株式数が仮条件決定時の売り出し株式数の80%以上かつ120%以下の範囲内

③公募価格決定時の規模(公募価格×株式数)が
 「仮条件決定時の株式数×80%×仮条件下限」以上かつ「仮条件決定時の株式数×120%×仮条件上限」以下の範囲内

 ①により「公募価格が仮条件の範囲外で決まる」ようになりました。具体的には、仮条件の下限80%~仮条件の上限120%が公募価格の範囲になりました。上限、下限それぞれ20%範囲が広がっています
 10月に上場する笑美面などはすでにこの変更が適用されており、一部証券会社では需要申告画面に注記が追加されています。

 ここで注意しないといけないのが、「指値で抽選申込(需要申告)していると、抽選対象外になる可能性がある」ということです。ストライクプライスなど、成行条件での申告ならば問題ありません。公募価格決定時に抽選される証券会社(前期型)の場合は、公募価格が仮条件の上限を超えた場合、抽選対象外になる可能性が高いです。絶対に欲しいIPOは「成行」で抽選申込しましょう!

 ②と③により、公募価格決定時に売出株数が増減する可能性があります。需要申告で人気があれば売出株数を増やす既存株主が増えるでしょうし、逆に人気がなければ売出株数を減らしてコンパクトにするかもしれません。最大20%で他の条件との兼ね合いもありますが、初値形成に与える影響は大きそうです。

 いずれも範囲が明確に決められているので、公募価格決定時にいきなり規模が倍になったりはしません。具体例を見てみましょう。

・仮条件決定時
 仮条件 800円~1,000円
 公募  100万株
 売出  100万株

 この場合、以下3つの条件をすべて満たす範囲で変更が可能になります。

①公募価格は640円以上~1,200円以下
②売出株数80万株以上~120万株以下
③規模12.8億円以上~24.0億円以下

 変更前は仮条件の範囲内での変動だったので、規模は16.0億円~20.0億円での決定でした。比較してみると範囲が拡がっているのが分かりますね。今までよりも需要に近い条件での上場が増えそうです。

(2023年12月4日追記)
ブルーイノベーションの公募価格が1,584円で決定しました。
仮条件が「1,220円 ~ 1,320円」だったので、仮条件上限の1.2倍で決まっています。

承認から上場までの期間が短くなる

 ふたつ目は、「上場日程の期間短縮(承認前提出方式)」です。
 今までは承認時提出方式と呼ばれる方式でしたが、今後は承認前提出方式も可能になります。承認前提出方式を選ぶと承認から上場までの期間が短縮されます。

 承認時提出方式と承認前提出方式の違いは次の通りです。

・承認提出方式…上場承認日に有価証券届出書を提出(承認~上場まで1か月程度
・承認提出方式…上場承認前に有価証券届出書を提出(承認~上場まで21日程度

IPO日程

<出典:日本証券業協会

 承認日から上場日までを短縮することで、市場変動によるリスクを抑えようとしているようです。この変更は、IPO投資家にはさほど影響がなさそうです。

IPOの日程が変動する

 最後は、「上場日程の柔軟化(承認前提出方式・承認時提出方式)」です。これがある意味一番影響が大きな変更かもしれません。
 今までは上場承認時に仮条件決定、需要申告期間、公募価格決定などの日程が確定していました。それが、今後は1週間程度の幅を持たせた状態で承認されます。

 以下は10月12日に上場承認された「Japan Eyewear Holdings」のIPO日程です。東証の新規上場会社概要には次のように書かれています。

仮条件決定 10月30日
抽選申込
(需要申告)期間
10月31日から最長11月13日まで
公募価格決定 11月8日から11月14日のいずれかの日
購入期間 最短11月9日から最長11月20日まで
上場日 11月16日から11月22日のいずれかの日
(上場日の4営業日前までに決定予定)

 このように、抽選申込(需要申告)期間以降にかなり幅があります。

 見やすくするために図で説明します。
 色の濃いところが最短日程です。抽選申込(需要申告)期間以降、薄い色のところまで延びる可能性があります。

<Japan Eyewear HoldingsのIPO日程>

IPO日程

 実際どの程度変動するのかは分かりませんが、抽選申込期間が延びるということは、証券会社によっては資金拘束の期間が長くなります。また、公募価格決定日がずれるということは、抽選日がずれるということなので、資金移動の予定が立てにくくなります。さらに、上場日が変動することで、同日上場の件数が変動します。変動の結果同日上場が増え、買いが分散してしまうことも考えられます。IPO投資家にとっては、どちらかと言うとデメリットが目立ちますね。

 上場日が変動すると、12月などのIPOラッシュ時にスケジュールの把握が難しくなります。今まで以上に管理が重要になってくるでしょう。
 IPOスケジュールIPOアプリでしっかり把握しておきたいですね。

変更点まとめ

 発表された変更点を解説してきましたが、 これから適用されるルールなので、11月IPOから12月IPOで本格的に動き出すルールと言えます。初値形成へ大きな影響を及ぼすので、今後のIPOの動向は要注意です。

 今回の変更で、IPO投資家に直接関係ありそうなのは「公募価格が仮条件の範囲外で決まる」、「IPOの規模が後から変わる」、「IPOの日程が変動する」という3点です。特に12月のIPOラッシュ時には変動日程の悪影響が大きく出そうです。
 IPOスケジュールでは最初に最短日程を掲載しています。その後の日程は確定したら随時更新していく予定です。スケジュール管理にはIPOアプリも活用ください!

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